COLUMN

売上げが伸びない理由と打開策-売上げの壁(2) 成長戦略

前回は、特に社長1人の個人事業の壁として2000万円についてお話しましたが、今回は、次の1億円や3億、7億円あたりの壁についてです。

社員が数人~数十人程度、一人何役もこなすプレーヤー社長であることが、この規模の会社にはかなり共通しています。そして、売上規模が大きくなるほど、会社として組織図はそれなりに整っていきますが、実質は「社長と社員全員」という構図で会社が回っています。

規模が大きくなれば、社長以外にも優秀なプレーヤーが複数いたりしますが、仕事のすすめ方はやはり属人的で、組織としての動きになっていないなどの点も同じです。またたとえば、少額の消耗品を購入する際にも社長の決済が必要、などの点においても共通しています。

特にこの「少額決済」の例は、かなり規模が大きくなった企業でも、たとえば創業社長の場合など、まだ事業規模が小さかった昔通りのルールがそのまままかり通ってしまう例は、今でも多くみられるので驚きです。

業務の仕組み化

さて、2000万円の壁を超えるためには、製品やサービスを論理的に言語化し、「商品」としての洗練度を高めること、とお話ししました。1、3、7億円あたりの壁においても、その点は同じです。その上で、業務を一人何役もこなすプレーヤー社長の仕事を、適性を見極めつつ社員に割り振っていくことです。

この場合、ただ単に担当を決めて、関係者(営業であれば顧客)に紹介し、あとは口頭でOJTと称して“指導”するスタイルが日本の企業のでは一般的です。OJTとは、「何もしないこと」、あるいは、面倒な「引継書」などの業務マニュアルの作成を避けるための方便、とも言われる、多くの場合、有効性に乏しい慣習です・

つまり、担当を決め、口頭で指示・指導するだけでは仕事を任せたことにはなりません。「商品化」と同じで、ここでも言語化が必要です。そして、この言語化された仕事のすすめ方が、「業務マニュアル」であったり、「業務引継書」、「作業標準マニュアル」、仕事の「方針書」にまとめられます。こういった文章類を整備し、社内で共有することを、仕事を「仕組み化」すると言います。

何か新しいことを学ぶときには、必ず入門書であったり、ルールブックであったり、書かれたものを参照したり、それに基づいて勉強したりしますが、なぜか、会社では仕事のやり方についてきちんとまとめられていることは少ないのです。現代の不思議の一つに数えてもよいのでは、といつも思います。

そんな環境においては、早く仕事に慣れ、独自の方法を見出したスマートな社員が評価されたり、「地頭が良い」と言ってほめられたりします。残念ながら、皆が皆、このような人ばかりではなく、ゆっくりと失敗を繰り返しながら、着実に仕事を覚えていく人たちもいるわけです。決して、どちらが劣っているということはありません。ただ、性格や特質の差があるだけです。

ところが、会社においては、そのようには見てもらえず、物覚えの良い人が多くの仕事をこなし、そしてあらたな属人的な仕事のすすめ方をよしとする社風が強化されてしまいます。

どうして、このようなことを繰り返してしまうのでしょうか?

それは、その会社の仕事の“参考書”や“ルールブック”が整っていないか、まったくないからです。つまり、「仕組み化」されていないのです。そして、昔ながらの徒弟制度のような口伝や師匠の背中を見て仕事を覚えていくというやり方が、21世紀のこれほどの激動の社会にあっても延々と繰り返されているのです。

社長の仕事

「うちには人材がいない」と嘆く前に、社長としてまずやることがあります。皆が、等しく学んだり、参照したり、さらにはもっと良い方法を考えたり提案したりするための「たたき台」としての言語化された「仕組み」づくりです。まずは義務教育から始め、中等教育、高等教育へと社員が成長していくための、言語化された仕事の体系づくりです。

この点は、何度も繰り返したいのですが、会議にはアジェンダや“たたき台”が必ず必要なように、仕事にも土台となる「書かれたもの」がかならず必要なのです。そして、このたたき台をより洗練された形に近づけるように、皆に考えてもらい、改善してもらうことで、徐々に会社の仕組みが整ってきます。そして、それと呼応して社員が成長していきます。

さらに、書かれたものがあるので全社で共有できるようになり、それをベースに社内で皆が共通言語を使いコミュニケーションが可能になります。「共通言語」は重要です。同じ言葉を使っているのに、製造と営業では全然違う意味に使っていたなどということは日常茶飯事です。

たとえば、「利益」という言葉がもっとも分かりやすいと思います。「いったい、この会議では売上総利益(粗利)の意味で使っているのか、それとも、営業利益なのか、純利益なのか」、あいまいなまま使われることが多い言葉です。

これでは、うまくメッセージを伝えられず、誤解を生み、タテ割り組織の弊害を助長してしまいます。(いわゆる大企業の症例であるタテ割り組織の弊害は、小規模企業でも例外ではありません)言葉の定義を明確にするという意味でも、やはり社長としては言語化して、社内での頻出用語を定義し、皆に周知させておくべきです。

応用編として、さらに次のステージにつなげるための布石として、失敗事例やトラブル・クレームへの効果的な対応方法についても、ぜひ言語化し、社内で共有しましょう。その問題が業界特有のものであり、競合他社も同じ問題を抱えているとしたら、あらたな対応方法を標準化(=「商品化」のことです)することで、新規サービスとして競争優位を築くことができる可能性もでてきます。

このように、「商品化」→「仕事の仕組み化」→「社員の成長」→「あらたな商品化」→「競争優位の確保」という正のスパイラルにうまく乗ることができれば、さらにその上の10億円に向かって進んでいく土台が形作られていきます。

次回は10億円の壁についてお話します。

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